金利平価説(その6)

カバー付き金利平価説の検証

 カバーなし金利平価説について検証してきたが、外国為替証拠金取引の説明で示したように、為替取引で現実に受け取れる金利は政策金利差ではなく、スワップポイントといわれるリスクプレミアムを含めた金利であった。したがって、 カバーなし金利平価説の金利は机上の空論に過ぎず、現実に受け取れる金利ではないことを意味する。現実の取引における金利を反映するためにはスワップポイントから計算した金利を用いる必要がある。これはフォワード為替レートの式から、\( \small X(t) \)を日付\( \small t \)のスポット為替レート、\( \small S(t) \)を日付\( \small t \)のスワップポイント、\( \small D(t) \)を日付\( \small t \)のスワップ期間とおくと、$$ \small X(t+1) = X(t) + S(t) \qquad \qquad \qquad \qquad \\ \small r^{1st}-r^{2nd}+\lambda = -\frac{\ln \frac{X(t+1)}{X(t)}}{D(t)} \approx -\frac{\frac{X(t+1)}{X(t)}-1}{D(t)} $$で計算できる。

 しかし、個人投資家から見るとスワップポイントのデータを収集するというのは壁が高いように思える。一般に、外国為替証拠金取引や為替スワップは相対取引であり、取扱業者ごと異なるレートで取引されており、それらのデータは金融情報ベンダー(ReutersやBloombergなど)が収集しているものの、有料の情報であるのが通常である。例外的なのは、東京金融取引所(TFX)のくりっく365であり、実際に付与されたスワップポイントのヒストリカルデータを公開している。一般に誰でも入手できるという点ではこれを利用する以外の選択肢はないように見える。

 実をいうと、データを入手できても、それを適切に加工してデータ分析ができる個人投資家というのはほとんどいないのではないかと推測される。というのも、スワップポイントのデータを金利のデータには直すには、スワップポイントの日数が必要になるのだが、これをTFXは提供してくれていない(はず)。そのため、分析しようとするとこれを自分で計算しなければならないのだが、これを実行するには各通貨ペアのスポット日の計算の市場慣習をしらなければならず、かつ、各通貨の参照する都市の休日データが必要になる。普通の人はこの市場慣習を知らないだろうし、休日データを用意するのは結構な苦行が強いられる。加えて、(次回の投稿で提示するが)事前に知識がないと実際に計算した結果はちょっと驚くものであり、適切に計算できているか自信が持てないものと思われる。

 ここではなんと、その市場慣習の計算方法と休日データを提供しようではないか、というわけである(とってもお得!!というほど価値がある情報かは知らんが。)。休日データについては別のページで取得できるようにするので、メニューから参照してほしい。

スワップポイントから金利のデータを逆算するためにスワップポイントの日数を計算する場合などで、休日のデータが必要になる場合があるため一覧にしておく。利用したければExcel等にコピペすればよいだろう(精度は保証しないが)。

外国為替市場におけるスポット日の計算方法

 スポット日の計算方法はストレート(対USD)とクロス(それ以外)で差異がある。外国為替証拠金取引で扱われない通貨ではさらに異なる方法の通貨もあるだろうが、ここでは取り扱わない。最初に、ストレートの場合の計算方法を示す。

  1. 休日都市はニューヨークと対象の通貨の休日都市であり、USD/CAD、USD/TRY、USD/RUBは1営業日後がスポット日、それ以外は2営業日後がスポット日である。
  2. 2営業日後がスポット日である通貨は、最初の1営業日目はニューヨークが休日であっても営業日としてカウントする。例えば、USD/JPYならば、最初の1営業日目は東京のみで翌営業日を計算し、次に東京とニューヨークの休日を参照した翌営業日がスポット日となる。この計算には例外があり、USD/MXNは2営業日ともニューヨークを含めた営業日で計算する必要がある。

クロスレートの計算方法は以下のとおりである。

  1. 休日都市はニューヨークと対象の通貨ペアの休日都市である。例えば、GBP/JPYでは東京、ロンドン、ニューヨークが対象となる。対象日は対USDのスポット日の日数のうち大きい方を採用する。例えば、CAD/JPY,TRY/JPYはいずれも2営業日後がスポット日になる。
  2. 最初の1営業日目は、それぞれの通貨の休日都市のみを参照して計算し、どちらか先日付のものを1営業日目とする。例えば、GBP/JPYではロンドンのみで計算した翌営業日と東京のみで計算した翌営業日のうち、先日付の方を第1営業日目とする。対USDのスポット日が1営業日後であるCAD/JPYやTRY/JPYは東京のみで計算した翌営業日が第1営業日目となる。MXNは1営業日目もニューヨークを含めて計算する。
  3. 計算した第1営業日目の翌営業日をニューヨークと対象の通貨ペアの休日都市を参照して計算した日付がスポット日となる。

スワップポイントが付与される際の日数は当日のスポット日から次の取引可能日のスポット日までの日数である。為替レートの説明のところに記載した通り、結果的にこの日数が0になる場合もあり、その場合はスワップポイントは付与されない。このようにして計算したスワップポイントの日数を用いて計算した実際の利回りは次の投稿で示す。

外為証拠金取引は実際には外貨の受け渡しを伴わない取引であるため、それが2営業日後に受け渡しされるわけではない。代わりに、当日のスポット取引であったポジションを、翌営業日のスポット取引に交換するという処理が行われる。

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