債券と金利スワップ
長期金利の市場として重要な市場は、債券市場(特に国債市場)と金利スワップ(銀行間の融資に用いられる)である。金融取引の多くはこの2つの金利を基準として決定されている。債券は市場で売買することができる借用書のようなものであり、金利スワップはインターバンク市場で銀行が他の銀行に固定金利で融資する場合の金利と考えてよい。いずれも、一定期間ごと(3か月、6か月など)に利息が支払われる取引の金利である。例えば、半年ごとに金利\(\small R \)が支払われる債券の現在価値は$$\small PV= \frac{R}{2} \sum_{i=1}^{20} DF\left(\frac{i}{2}\right) + DF(10)$$と表される。政府や中央銀行が公表する国債利回りはこの価値がちょうど1(債券では100を基準に単価を計算する慣習があるが、ここでは1としている。)になる\(\small R \)を公表していると考えられ、このような利回りはパーイールド(Par Yield)といわれる。金利スワップのレートもこのパーイールドといわれる金利に相当していると考えてよい。
上記の関係を用いて、市場金利のイールドカーブからディスカウントファクターを求めることができる。半年ごとの利回りが\(\small R_{0.5},R_{1.0},R_{1.5},\cdots,R_{30}\)で与えられていると仮定する。上記の関係式を用いれば$$\small \left[ \begin{array}{ccccccc} 1+\frac{R_{0.5}}{2}&0&0&\cdots&0&0&0 \\ \frac{R_{1}}{2} & 1+\frac{R_{1}}{2} &0&\cdots&0&0&0 \\ \frac{R_{1.5}}{2} & \frac{R_{1.5}}{2} & 1+\frac{R_{1.5}}{2}&\cdots&0&0&0 \\\vdots&\vdots&\vdots&\ddots&\vdots&\vdots &\vdots \\ \frac{R_{29}}{2}&\frac{R_{29}}{2}&\frac{R_{29}}{2}&\cdots&1+\frac{R_{29}}{2}&0&0 \\ \frac{R_{29.5}}{2}&\frac{R_{29.5}}{2}&\frac{R_{29.5}}{2}&\cdots&\frac{R_{29.5}}{2}&1+\frac{R_{29.5}}{2}&0\\ \frac{R_{30}}{2}&\frac{R_{30}}{2}&\frac{R_{30}}{2}&\cdots&\frac{R_{30}}{2}&\frac{R_{30}}{2}&1+\frac{R_{30}}{2}\\ \end{array} \right] \left[ \begin{array}{c} DF(0.5)\\ DF(1)\\ DF(1.5) \\ \vdots\\ DF(29) \\ DF(29.5) \\ DF(30)\\ \end{array} \right]=\left[ \begin{array}{l} 1\\ 1\\ 1\\ \vdots\\ 1\\ 1\\ 1\\ \end{array} \right]$$であり、この連立方程式を解けばよい。この形の連立方程式は手前から順番に解くことができて、手前から連立方程式の解を求める方法がブートストラップ法といわれることは補間処理のところで説明したとおりである。実際に公表されるデータは1,2,5,10,15,20,30のように間隔があいているが、間の期間の金利は線形補間やスプライン補間で求めてしまえばよいだろう。
金融市場と市場金利の種類
金融市場における金利には様々な種類があるが、大まかに以下のものである。
- 短期金融市場(マネーマーケット)
- デリバティブ市場(主に金利スワップ)
- 国債などの債券市場
FXトレーディングで関係があると考えられる金利は主に短期金融市場と国債市場だろう。短期金融市場は金融政策のターゲットになる市場であり、スワップポイントが影響を受けるためである。短期資金の貸付市場であり、コール市場(銀行間の短期ローン市場)、銀行手形(Bank Bill)やレポ取引(債券を担保にした資金取引)の金利が金融政策の対象になる。
国債取引は金額が非常に大きく国際取引も活発であるため、資金フローが為替レートに影響を及ぼすと考えられている(本当かどうかは定かではないが。)。金利スワップも影響がないわけではないだろうが、国債利回りとの連動性が高く、資金フローを伴わない取引であるので相対的には重要性が低いと考えられる。また、短期金融市場や国債の利回りは比較的容易に入手できるのに対して、金利スワップのデータは入手できない場合もあり、利用しづらい部分がある。金融市場の各データの取得元は可能な限りデータリンク集に随時追加する。
まとめ
ここまで説明した金利計算のようなものは、トレーディングをする上では利用することはないと考えられるが、為替スワップの理解や経済理論の理解をする上では知っておいた方が良いことであろうと思う。とりわけイールドカーブというものが経済や金融市場を理解するうえで重要なものであることは説明していくつもりである。