注文の種類
FXに限らず金融取引の注文の方式としては、成行注文(Market Order)と指値注文(Limit Order)がある。成行注文は現在市場で提示されているBid価格、Ask価格で取引を成立させる注文方式であり、指値注文は指定した注文価格にBid価格、Ask価格が到達した場合のみ取引を成立させる注文方式である。取引の成立を優先するのであれば成行注文を利用すればよいし、取引価格を優先するのであれば指値注文を用いればよいだろう。
指値注文にはいくつかのバリエーションが存在しており、列挙すると以下のとおりである。
- 通常の指値注文(Limit Order)
- 逆指値注文(Stop Limit Order)
- IFD注文(IF-Done Order)
- OCO注文(One-Cancels-the-Other Order)
- IFDOCO注文(IF-Done One-Cancels-the-Other Order)
現在の価格から見て即座に取引が成立しない価格の指値注文が通常の指値注文である。逆指値注文は現在の価格で取引が成立してしまう方向の価格の指値注文だが、その価格に到達するまで取引が成立しない指値注文であり、ストップロス等に用いられる。
IFD注文は逆指値注文の拡張であり、市場の価格が一定の条件を満たしたとき、あらかじめ指定した指値注文を発注する注文方式である。逆指値注文と異なり、条件の価格と発注する指値の注文価格が異なってもよい注文方式である。OCO注文は注文価格が異なる2つの指値注文を同時に発注し、片方の取引が成立したらもう一方の取引を取り消す注文方式であり、IFDOCO注文は市場の価格が一定の条件を満たしたとき、OCO注文を発注する方式である。直感的には、IFD注文は取引のエントリー、OCO注文は利食いとストップロスを同時に指定する注文と言えるが、必ずしもそのような用途に限定されるものではない。どれを使うかは個人の好みであり、好きな注文方式を利用すればよいと考えられる。常に画面にへばりついていられるのであれば、成行注文だけでも事足りる話だろうと考えられる。
アルゴリズム取引
取引量が多い場合、一回の取引ですべての注文を成立させるのは困難であるため、分割して繰り返し発注するという手法がとられる。また、上場取引等で指値注文を板に乗せたくない時に、取引を成立できるだけの指値注文が並んだら成行注文を発注するように予約しておく(隠しておく)という手法がとられる。このような分割発注や条件を監視して成立したら自動的にプログラムに基づいて注文を発注することをアルゴリズム取引(Algorithmic Trading)という。語感からなんとなく自動売買やシステムトレードと同義と思ってしまうかもしれないが、注文の発注方式に含められるべきものだろう。最近では、個人投資家でもこういった注文方式が使えるようになってきているようである。
あまり深入りしないが、分割による繰り返し発注の代表的なものはVWAP(Volume Weighted Average Price)、TWAP (Time Weighted Average Price) といった取引量や時間の経過に比例するように注文を分割して発注する方式だろう。VWAPの発注アルゴリズムは数学的、統計学的な手法が用いられていると推測され、そのあたりが重要な研究の対象なのだろうと思われる。
条件に基づいて発注する方式の代表例はトレール注文、アイスバーグ注文、スナイパー(ステルス)注文である。トレール注文(Trail Order)は現在の市場価格に対して一定の価格差がある指値注文を自動的に発注する注文である。市場価格が上昇する(下落する)とそれに合わせて自動的に指値価格を引き上げる(引き下げる)注文方式である。アイスバーグ注文(Iceberg Order)は取引数量を分割して発注し、取引が成立すると同じ数量の指値注文を繰り返し発注する方式である。最後のスナイパー注文(Sniper Order)は取引量が成立できるだけの指値注文が板に並んだ場合に指値注文を発注し、取引を成立させる注文方式(成行注文の自動監視バージョンみたいなものかもしれない)である。
FXの注文板(Order Book)
株式と異なり、FXでは取引所取引を除けば注文板は見えないことが通常であろう。というのも、FX業者自体が為替のブローカーやマーケットメーカーの1顧客でしかないため、そもそもそのような情報を持っていないと考えられる。また、為替のブローカーやマーケットメーカー自体も自社に発注された注文のみしかわからないため、金融機関のディーラーの人たちも自社で受けた注文の板は見ることができるかもしれないが、市場全体での注文と言うのは当然のことながら知ることができないと推測される。為替やデリバティブなどの店頭取引の市場というのはどうも全体像がよくわからないようにできているのかもしれない。