購買力平価説(その4)

エマージング通貨の購買力平価と市場為替レート (続き)

 他の通貨についても同様に計算すると以下のようになる。最初にPLN(ポーランドズロチ)、BRL(ブラジルレアル)、RUB(ロシアルーブル)、TRY(トルコリラ)は以下のとおりである。RUB,TRYを2倍とするのは少し違うかもしれないが、一定の傾向は見いだせるだろう。

続いて、HKD(香港ドル),SGD(シンガポールドル),CNY(中国元),KRW(韓国ウォン)は1.5倍程度比較すると良いかもしれない。ただし、CNYは日本のバブル崩壊と同様の経路(米国との通商問題→国内経済の成長鈍化)を辿るシナリオになると、今後1倍により近づいていく可能性もあると考えられるので注意が必要かもしれない。HKDは基本的にUSDにペッグしているため対USDでは市場為替レートはほとんど変動しない。

最後にINR(インドルピー),IDR(インドネシアルピア)は大体3倍を参照していると考えられる。ちなみにインドはPPPベースではGDPが日本を抜いて世界第3位になっているが、市場為替レートベースでは当然1/3程度になる。国際比較という点ではPPPベースは相対的に物価水準が安い国ほどGDPが高くなるため、あまり意味がないと考えられている。

まとめ

 購買力平価説について実際のデータを用いて検証したが、短期的な変動は捉えられないまでも為替レートの水準がどの程度になるべきかという目安としては有用であることは確認できただろう。ここから乖離する要因として何があって、どの程度の影響力を持つかというのが短期的な為替レートの変動要因の分析になると考えられる。何となく購買力平価では説明できないといった解説がされることが多く、無視してしまいがちであるがファンダメンタル分析では最も基本的な概念であると考えられる。

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